中村哲先生をしのぶ会


2月1日に「中村哲先生をしのぶ会」が東京都練馬区で開かれ、当会を代表して須田運営委員が参加し、中村哲先生と当会との思い出について語りました。

須田運営委員の言葉

土木技術者女性の会の須田でございます。
この度は、中村先生との思い出について発言する機会を頂きありがとうございます。
まずは、亡くなられた、中村先生、ドライバーのザイヌッラー・モーサムさん、および4人の護衛の方々のご冥福をお祈り申し上げます。また、ご遺族の皆様、ペシャワール会の皆様に心よりお悔みを申し上げます。

私共、土木技術者女性の会は、土木の仕事に働きがいと誇りを感じる女性の土木技術者・研究者・学生の集まりです。2012年に創立30年を迎えるにあたり、その前年には東日本大震災を経験し、安心・安全な社会基盤の構築という土木の本質的な使命が揺らぎかねない無力感が蔓延しておりました。こうした状況を受け、土木技術者女性の会は、「いのちを守る土木の未来」をテーマとした創立30周年記念のイベントを日本各地で展開しておりました。そのような中で、中村先生との出会いがありました。
記念行事の締めくくりとして、土木の原点を再考し若い世代に土木の意義を伝えることを目的とした「どぼく未来フォーラム」を開催し、そこで中村先生にアフガニスタンでの取組みを通して土木の原点を語って頂き、フォーラムの目玉に「どぼく未来宣言」を打ち出そう、という無謀ともいえる企画を模索しておりました。

2011年12月11日、土木学会が主催する中村先生の講演会があり、終了直後に、先生と直接お話できるタイミングがあるかもしれないということで、土木技術者女性の会の会員の顔写真を集めた「顔いっぱい」ポスターをもって押し掛けたのが、今、スクリーンに映写していただいている思い出の写真です。
土木を仕事にしている女性はとても少ないですが、こんなに沢山の人が、魅力を感じて頑張っています。女性、男性、の性別にかかわらず、若い世代に土木技術者の使命を伝えたい、100年後には土木現場に女性と男性が半々ずついる世の中にしたい、といった具合に、駆け付けたメンバー一人一人の熱い想いをお伝えしたところ、中村先生はすぐに共感してくださり、日本に来る機会は少ないので会場には行けないが「応援メッセージ」を必ず送りますと、約束してくださいました。

そうして半年後に届いたのがお手元の「応援メッセージ」です。
これぞ土木技術者魂と心震えるものがありました。中村先生の素晴らしいところは、ただ、土木施設を提供するというのではなく、地元民が自力で保全できる施設でなければならないというところにとことんこだわりぬいたことです。
また、土木技術者女性の会が掲げた「いのちを守る土木の未来」というテーマを、「大きな挑戦」であるとして、「幾多のフロンティアを生み出してゆく」と激励頂き、さらに、「女性であればこそ、理屈ぬきにいのちの尊さを、利害を離れて直観できるものがある」と、女性の土木技術者であることを素直に誇りに思える素晴らしいメッセージに感動いたしました。

中村先生の「応援メッセージ」は、「どぼく未来宣言」の起草に大きな啓示を与えてくださいました。最後に、「どぼく未来宣言」をご紹介して発言を締めくくらせて頂きます。

土木は、人々の命と暮らしを守り、真の幸福をもたらすという重大な使命を担っています。
わたしたち土木技術者は、常に自然災害の脅威に対して真摯に向き合い、それぞれの地域特性と社会特性に適合した自然と人間の共存のあり方を工夫し、自ら技術と人間性の研鑽に励むと共に、これを次世代に伝える努力を続けます。
2012年6月22日 土木技術者女性の会

これからも、先生の「応援メッセージ」に込められた想いを、次世代に伝える努力を惜しまずに活動して参る所存です。先生との出会いに感謝申し上げます。

「中村哲先生をしのぶ会」の会場
写真提供:中村哲先生をしのぶ会実行委員会

中村哲先生と当会との思い出について語る須田運営委員
写真提供:中村哲先生をしのぶ会実行委員会

中村哲先生と当会幹部(当時)との記念写真がスクリーンに
写真提供:中村哲先生をしのぶ会実行委員会

[Last updated on 2020-02-14]